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3月中に観に行ったミュージカルについて感想を一気に書きたい

4月も終わりに近づいていますが、3月とは打って変わって落ち着いた空気はいかがでしょうかミュージカルファンの皆さま。なお私は関東在住なので、今忙しいんだよ! という関西の皆さまやその他の地方の皆様、あとマチルダとかで忙しいんだよ! という皆様には私基準の問いかけで申し訳ないです。(ちなみにマチルダは個人的にどうしても苦手な要素があって舞台上を観ていられないシーンがあることが想像に難くなかったので観劇をパスしました。評判はいいらしいのでいつかその要素が消えるか私が大丈夫になるか推しが出たら(最後は荒療治)再演観たいです。)

 

いやー3月ヤバかったですね! スケジュールが!
ばったばったしすぎて床で寝落ちすることもしばしばでろくに感想呟けてなかったんですがまあまたそれが揃いも揃ってほぼ観てよかったー! だったので、個人的に落ち着いた今感想を一気に書きたいと思います。完全に自分向けの記録ですが、もしご興味あれば暇つぶしにどうぞ。もうすぐゴールデンウィークだし。(誰だよ休み取れば9連休って言ってるやつ)

 


注意事項。
・長いです。
・読みにくかったらすみません。私の文章力不足です。
・全てにおいてネタバレに全く配慮していません。これからまっさらな状態で地方公演を観る予定の方などはお気をつけください。
・個人の感想です。解釈違いがあっても私の感想なのでそこは仕方ない。諦めてくれ。

 


なお目次。この作品だけ読みたい、ってものがある場合はリンクで飛べます。(ただしここに戻ってくる時はお手数ですがスクロールで戻ってきてください)

 

1:RENT
2:ジキル&ハイド
3:ライオン・キング
4:マリー・キュリー
5:SPY×FAMILY
6:太平洋序曲(←これだけほぼマイナスの感想しかない 気をつけて)
7:ジェーン・エア(配信)

観た順(複数回観たものはMy初日基準)です。一部首傾げるものも入ってると思いますがそれは後で説明するのでとりあえず流して。

 



1:RENT

皆さんは何のせいで3月忙しかったですか? 私は8割方これです。理由は単純、推しが出てたので。3月のスケジュールはRENTの合間の空いてる時間に他の予定を詰め込んでるようなものでした。最初に見たのが2020年の秋、それが途中で中止になってしまってからずっとずっと待ってた再演でした。
推しの甲斐翔真くんを観る、を前提にスケジュールを組んだので古屋さんのロジャーのみ1回の観劇でしたが、通いまくったので古屋ロジャーまわり以外のだいたいの組み合わせは観たと思います笑

 

RENTやっぱ面白いですね!
私は推しがミュージカルに出るようになったと同時にミュージカルにハマったので、2020年のRENTを観た時は私もミュオタ初心者だったし、推しもミュージカル俳優1年目だったし、他のキャストさんもRENT初めて! とか役替わりしました! とかの方が多かったので、今こうして中止になることなく最後まで続いた公演を思い返していると2020年もちゃんと続いてたらもっともっとパワーアップしたり私の理解も深まったりしたのかなあと思いつつ。(いや2020の時点で十分良かったんですが)

 

多少の入れ替え、役替えがあったものの、概ね2020年のキャストが集結した2023年春。その2年半で、舞台の上で、他の様々な場所で経験を積んで、何よりこの世界を2年半生き抜いてきたキャストさんたちは、いっそ「凄みに溢れてる」という表現がふさわしくて、また2020年にはこれどういう意味だったんだろうと謎のままだった場所も役者さんの表現力がアップしたおかげでめちゃくちゃ納得がいって、本当に最高の公演を観たな、という気持ちでした。

 

マークのふたりの違いが良いんですよこの座組。
平間さんのマークは最初から「傍観者」であることを自覚していて、そんな立ち位置でカメラを回している。対する花村さんのマークは仲間に入ることの手段がカメラを回すことで、レンズを通してその仲間の中に入っている「気分になっている」。だから少しずつ少しずつ、言葉のニュアンスも変わってくるんですよね。Wキャストってだいたいそうだと思うんですけれど。
二幕中盤、彼がひとりで歌う「どうして僕は傍観者なのか フィルムの中に僕はいない」って歌詞があるんですが、平間さんマークのその言葉には「今までずっと傍観者であったことへの後悔」が、花村さんマークのその言葉には「仲間に入ってるつもりでいたけれど、いつも外からそれを眺めているだけだった自分の孤独に気づく瞬間」が、それぞれ含まれているような感じがして。


その後仲間がばらばらになってルームメイトであるロジャーとも言い争いの末喧嘩別れするシーンがあるんですけど、平間さんマークは少しお節介な世話焼きである故にその一言がロジャーの神経を逆なでしてしまって本格的な言い争いになってしまって最後は仲たがいのまま一旦別れてしまう。対する花村さんマークは自分は孤独なんだという悲しい気持ちのままでロジャーと言い争うからロジャーの感情の吐露であると同時にマークの感情の吐露のシーンになるし、ロジャーの「かわいそうな奴」もどこか平間さんマークに対するよりも哀れみが籠っているし、言い争いをして仲たがいをしても優しい花村さんマークは「電話する」というロジャーの言葉に手を上げることで答えてあげる。
次があったら是非比べて見てくださいって言いたいんですけどこのふたりたぶんもう次回はいないから映像を見せてくれー!!! って気になってしまいます(平間さんはSNSで「RENTの旅が終わりであること」を明言、花村さんはまた聞きですが東京楽の挨拶で「苦しい役でまた引き受けるのを迷ったけど、とにかくこのメンバーとSoLを歌いたいから戻ってきた」と発言しています)

 

本当全員の話をしたいんですけどあまりに長くなるのであと推しの話をします。(……)
そもそも2020年にRENTを観に行ったのは甲斐翔真くんがロジャーをやるから、でした。なので初RENTが2020年です。今でも初日にロジャーがフードを取った瞬間「金髪 に なってる!?」で意味の分からない衝撃を受けてRENT聴いてる間中ずっと泣いてたのは忘れられません。金髪最高でしたが隣の人には相当のレントヘッズだと勘違いされたかもしれません。
ちなみに堂珍さんのロジャーは観るはずだった公演が中止になってしまい観られませんでした。そう、半分も行かないうちにその後の全公演が中止になってしまったのが、2020年のRENTでした。

 

で、満を持しての再演。2020年直後のZoomでの演出家のオンラインセミナーみたいなので「また出てくれるかは彼ら次第だから」みたいなことを言っていたので強い期待はしないで待っていましたが、ほとんどのキャストさんがもう一度やることを選択してくれて(もちろん出演されなかった方の選択も尊重します)、推しももう一度ロジャーをやることを選択してくれて、本当に嬉しくて、楽しみでなりませんでした。
が、ロジャーのこと、2020年ではあまりわからなかったんですよね。「行動になんか一貫性がないなあ、格好いいけど」くらいな感じでした。

 

2023年の甲斐ロジャーは、本人がファンミーティングで「感情を一つ一つ大事にするようにしてる」とお話ししてくれましたけど、本当にそんなロジャーで、行動の全てがひとつの線でつながった感動がありました。
恋人だったエイプリルを喪った過去、手にイニシャルを彫るほど愛していた人の突然の死をおそらく第一発見者として目撃して、それと同時に自分の命の期限も差し迫っていることを知ってしまって。
だから人は愛せないけどせめて一曲生きた証として残したいともがいていたら、ミミという女性が現れて、いろいろな偶然が重なって愛し合えるようになって、でも彼女があまりに早く弱っていくことにエイプリルを重ねてしまってもがいているところへ友人のエンジェルがいなくなってしまって。
Goodbye Loveのロジャーは自分勝手に喚き散らしている印象が強いですが、ここまでの積み重ねがあって、あまりにもトラウマが強すぎてコントロールが自分でも効かない結果なんだな、と納得できたのは、2023年の彼の表現があったからです。

 

甲斐ロジャーはあまりにも表情が弱々しくて繊細で、強がっているところですら泣き声になっていたりして、本当に「もがいている」印象が強いロジャーでした。RENTの物語は彼を中心に動いていくわけですけれど、彼の感情が表情や仕草や声色でめちゃくちゃ出てるのでもう物語がぐるんぐるん引っ掻き回されるんですよ彼のパワーで。そのくせ最後は元鞘だからずるいよなロジャー!←
でも、正直最後で何でミミは生き返るんだろう、というのに20年は明確な自分なりの理由がつけられないまま終わってしまったんですけれど、23年はここまでロジャーがもがいてミミを思い続けて最後はそれを素直に出せたなら、エンジェルも助けてくれるだろうな、とすんなり思うことが出来ました。

 

きっと次に再演することがあったらキャストががらっと変わる気がするので、この2023年のファミリーを観られたことはとても幸運だったし、その記憶をもって次の公演を楽しみに出来るのもとても素敵なことだなと思います。

 

1回しか観てないけど古屋ロジャーはまっすぐで自暴自棄とやさしさの間で揺れてて魅力的だったし、
遥海ミミはパワフルなのにだからこそ2幕中盤からの弱っていく悲しさが際立っていたし、アリサミミはどこか悲しみを背負ってるように見える儚げででも強く立ってる魅力的なミミだったし、
加藤コリンズの安定感と言ったらそこにいるだけできっとルームメイトだった時もムードメーカーだったんだろうなって思えたし、ソニコリンズ最初はセリフちょっと言いにくそうな部分があったけど後半になるにつれてもうエンジェルを喪った時の哀しみとその後のそれでも生きようとする優しさがめちゃくちゃ素敵になって行ったし、
百名エンジェルキュートでダンスうまくて本当エンジェルやってくれてありがとうだし、RIOSKEエンジェルもう安定すぎるし綺麗すぎるしところどころで見せる色気やお茶目さがもうカンストしてたし、
えみこモーリーンもうモーリーンだなあ!って感じでハマってたし、りなモーリーンロングトーンは美しいのにその直後のパフォーマンスのギャップとかそりゃみんなに可愛いって言われちゃうモーリーンだよなだったし、
モーリーンに振り回されながらも自分を見失わない塚本ジョアンヌめちゃくちゃ格好良かったし(余談だけどタンゴモーリーンで電話が鳴った時のマークを制する声がめっちゃアメリカンで好きだった)、吉田ベニーいい奴すぎる上に歌が素敵だしあと言ってることが一番マトモ過ぎる上に行動がそれに見合ってて全く憎めなかったし(でもミミにちょっかい出すのといらないっつってた家賃いきなり請求するのどうかと思うよ!)、
吉田さんのSoLのフェイクが20年に続けて聞けて本当に幸せだったうえにもうすごすぎて毎回鳥肌ものだったし、長谷川さんの優しげなライフサポートの人とカフェでロジャーと仲良く拳ぶつけ合うシーン最高だったし、小熊さんのチャーミングなマークママとやさぐれたようなコート売りのギャップすごかったし、
チャンヘさんの怪しげな薬売りの演技がもうなんか好きで釘付けだったし、Zineeさんのアレクシー可愛すぎて憎めなかったし、ロビンソンさんのゴードンで寂しそうにした後のホームレスの「真面目に生きてる!」の落差すごかったし、

 

本当愛してるよ2023RENTファミリー。その器を作ってくれた2020RENTファミリーも。愛知の前楽でRENT聞きながら本当に推しの大千穐楽がようやく始まった感慨でぐちゃぐちゃに泣いてる私がいたんですけど、まあ結局2020年の初日と同じ状態だったってことなので、なんか綺麗にまとまった感じでしたね。

 

あと個人的にはまたWhat You Ownのセットぐるぐるするのが観られてめちゃくちゃ幸せでした(動き的にものすごく好きなシーン その後マークとロジャーがはしご越しに一瞬目を合わせて笑うのもめちゃくちゃ良かった)

 



2:ジキル&ハイド

推しがいつかやりたい! と豪語して憚らない作品。なので一度観てみたいとは思っていたんですが、発表されたキャストが大優勝過ぎて結局3回観ました。なお4回観てジキルとルーシーの組合せを制覇する予定だったんですが、石丸×真彩回だけ推しのイベントと取った日時がかぶってしまいチケットを手放すことに。それに伴いその1回だけの予定だった桜井エマも観られていません。(違うんです回数を絞ったんじゃなくてジキル×ルーシーの組合せと日付優先したらそういう配分になってしまって桜井エマはこの1回でじっくり観る! って思っていた回……だった……)分裂したかった……

 

面白かった! ルーシーがあれになっちゃうシーンはリアルすぎてびっくりしたけど!!!←
そりゃやりたいってなるよな! っていうジキル役の面白さ! 演じる方は大変だろうけど楽しいだろうなあ、と思いながら(上から目線ですみませ……)観ていました。石丸ジキルはさすがの一言だったし、柿澤ジキルはちょっとした笑いもあってとても良い。そしてお二方ともハイドになった時のギャップよ。

 

個人的にはルーシーがどちらも優勝過ぎて、あとエマも好きすぎてあとあの舞台セットも好きすぎたのでうっかり何も買わない予定だったのにルーシーとエマの舞台写真セットを買いました。後悔はしてない。
笹本ルーシーはもしかしたらこの人もっと上の階級にいたことがあるんじゃないかな……? と思わせるようなルーシー。気高さは失ってないんだけど、今いる場所からは逃れる術はもうなくてどこか達観か諦観がある感じ。だからこそ新しい生活ができるかもしれない(=昔のように戻れるかもしれない)という目の輝きと、それを踏みにじられた時の一瞬の絶望が悲しすぎる。ハイドの顔を観ながら事切れた時、彼女は何を思っていたんだろう。
真彩ルーシーは、たぶん昔からずっとこういうスラムのような場所にいて、そのままどん底にたどり着いたんだろうな、というような印象を受けるルーシー。真彩さんのイメージから娼婦……? と思ってたんだけど、見事にルーシーだった。足を開いて座る仕草は家庭で教わるような躾を一切受けてないんだろうな、という過去を想像させるし、ジキルからの手紙を読む時に少し読み方がたどたどしくなるのも、十分に教育を受けられなくて、文字は一応読める程度なんだな、と思わせる。だから新しい生活ができるかもしれない(=とにかくこの酷い場所から抜けて、別のどこか素敵な新しい世界に行けるのかもしれない)という希望と不安と、それを踏みにじられた時の茫然とした表情が悲しい。一度でも、彼女が幸せだった時はあったんだろうか。

 

エマは前述の理由でDream Amiさんしか観てないんですけれど、1回目見終えてからえっミュージカル初めて……? というのを知って驚いたくらいに素晴らしかった。強気で、賢いけど、世間知らずで、背伸びもたぶんしてるんだなあ、と思わせるエマ。声もとても素敵。あと恋人に長いこと会えなくてさすがにちょっと不貞腐れる様がチャーミング。最後は聖母のようで、めちゃくちゃ素敵でした。またどこかの舞台でお会いしたいなあ。

 

また舞台のセットがすごかった。回廊のような二階が張り巡らされていて、その中心ではジキルの自室が出てきたり、応接間なのかな? が出てきたり、あるいはエマの家、街中、どれも本当に豪華。厨二病が未だに治ってないとこがあるのでジキルの自室のセットには大興奮しましたが、話が進むにつれてどんどん机の上が荒れていくのがリアル……

 

ストーリーも面白かったんだけど、数ヶ所ちょっと納得いかないとこがあって、原作を読んだらわかるのかなってあらすじをざっとさらってみたら舞台版のストーリー原作と全然違ったー!笑 のでそういうもんなんだなって納得することにします。確かに原作の方がしっくりはくるんだけど、舞台としての華やかさとかを考えると脚本は正解だと思ったし。
ただ、どうしてもやっぱり「耄碌してしまった父親を元に戻したい」からの「人間の善と悪を分けられれば!」の流れはわからないんだよな……あの脚本が出来た当時、認知症なんかの精神的な病を発症するのは悪魔に精神を食われたからだとかそういう考えがあったんでしょうか。何かそういう文献とか知ってる方いたら教えてください。(わからなすぎてChatGPTに尋ねてしまったほどにわからん(なおChatGPTの答えは「明確な理由の説明がないから一般的な解釈しかわからん」でした。ですよねー! 一般的な解釈についてはなるほどなーと思いましたが同時にそれは公式の解釈ではなく人によって違うだろう、という見解もChatGPTと一致したので私の中に留めておきます←))

 

再演したらもっと観たいなあ!





3:ライオン・キング

いやまあ言いたいことはわかるがちょっととりあえず話を聞いてくれよ。

 

以前、まだミュージカルに露ほど興味もなかったころ、それでもそういうエンタメ系は元々好きだったので、3演目ほど劇団四季を観に行くチャンスをいただいたんですね。ただその時、楽しいと思えたのはリトル・マーメイドだけで(リトル・マーメイドは面白かった。海の底の表現半端なかったし、声が出ないって設定を心の声ってことで歌で表現するのかー! ってのが新鮮だった)、ライオン・キングも観たんですがイマイチぴんとこないまま終わってしまったんですよ。

 

で、ミュオタになった今観たらどう思うんだろうっていうのをずっと試してみたかったところ、「日付が空いたのに休演日とかが重なってて全然舞台がない」日があって、見たらライオン・キングだけがやってるしまだチケットあるし、だったのでこれはチャンスでは!? と思って観に行きました。ちなみに3演目のうちもうひとつは明確にあそこがなー! っていうのがわかっているのと今東京でやってないんで今はその時じゃないと思うんですけど、いつか挑戦してみたいですね。

 

というわけでこの忙しい3月にライオン・キングを観ました。
今観ると、やっぱり観方がわかってきたせいかリピートしたい! って程ではないけど楽しいなあ! って感情は湧きますね。あと四季独特の発声方法がちょっと苦手なんですけど、あれをやってるのに自然に聴かせる方々が何人かいてすげー! って思った。本当にプロなんだろうなあ。
ストーリーは単純明快ですけど、その分良かったなあ! で清々しい気分で終われる感じ。昔の私のもやもやにも一つ蹴りをつけることが出来ました。
ところでヤングシンバから大人シンバに変わる瞬間、前も少し笑ってしまった気がするんだけど、今観てもちょっと面白いって思ってしまうw 朝ドラとかの年代が進んだことによるキャスト交代を舞台にするとあんな感じになるんだなあ……w

 

幕間にロビーのあちらこちらで「ハクナマタタ!」って踊ってる子がいて微笑ましかったです。

 



4:マリー・キュリー

絶対好きな話だしキャストさんもちゃぴさんも上山さんも出てて夫婦役とか私得でしかないのに何で東京千穐楽しか日程が合わないの!? と発表の際キレた作品です←
RENTを取りすぎました。でも最推しを蹴ってこちらを入れる度胸はありませんでした。すみませんでした。

 

「ファクション・ミュージカル」、有り得たかもしれないもう一人のマリー・キュリーの物語、とわざわざ銘打たれているだけあって、史実として伝わっている彼女といい塩梅に離れているところがあったり、でも実はもしかしたら本当にこう考えていたけど史実として伝わったのは表面に見えていた今の記録なのかもしれない、と思わせる自然さが最高でした。歴史を適度に柔軟に想像して、「伝わっているものとは違うけど少しの匙加減で今伝わっている歴史に繋がるから、もしかしたらこうだったのかもしれないな」と思わせてくれる話はめちゃくちゃ好きなのです。

 

マリー・キュリーはそこら辺のフォローがめちゃくちゃしっかりできてて好感持てた。アメリカで実際ラジウムガールズ裁判になる前にフランスで揉み消された工場はもしかしたらあったのかもしれないし(ラストでルーベンはアメリカに渡っているし、アメリカのラジウムガールズが訴えを起こしたのはマリーの晩年の頃だ)マリーは本当はあんな風にラジウムの危険性を訴えていたけれど様々な圧力で揉み消されてしまったのかもしれない。もちろんそれは「もしも」の話なんだけれど、そこに繋がってもおかしくない、本当によく練られたお話しだなあと思いました。

 

タイトルが「マリー・キュリー」なのにもはっとしたんですよね。小さい頃図書室に置かれていた伝記の一つに「キュリー夫人」って書いてあって、どうしてこの人だけ夫人ってついてるんだろう? と疑問を抱きながらもそのまま通り過ぎてしまった記憶があるので。
劇中でもマリーが考え出したことを「ピエール・キュリーとその夫人」の功績として表彰されてしまうシーンがあるけれど、彼女はそういう時代にこんな偉業を成し遂げて、でも私はこのミュージカルを知るまで彼女がマリーという名前だったことすら知らなかったんだな、ということに気づいて、申し訳ないような気分になりました。マリー・キュリー。もう忘れない。
女性の地位、使い捨てにされる労働者たち、ラジウムの功罪、そういうことからも逃げないのに、単なる問題提起の物語になっていないストーリーがものすごいバランス。

 

マリーとピエールの関係性も大好きだなあと思いました。運命の人ってまさにこういう人たちのことなんだなって。だからこそ、葬儀の朝のシーンには泣きました。あれも「あったのかもしれない」シーンのひとつ。穏やかな役の上山さん初めて観たんですけれど笑、もっとああいう役でも観たいなあと思いました。いろんな役が出来る人なんだな。

 

マリーとアンヌの関係も好きだったなあ。元素周期表があんなに美しく見えたのも、元素周期表であんなに泣いたのも初めてです。

 

ねじ込んで観て本当に良かったけど、3月じゃなかったらもっとチケット増やしたかったー! なミュージカルの一つです。また再演やってくれないかな。

 



5:SPY×FAMILY

原作が好きです。アニメは途中まで見てます(見るのが嫌になったわけじゃなくて、続き物の映像作品見続けるのが激しく苦手なんですよね……)。
3月忙しすぎて入れるつもりなかったんだけど、FNS歌謡祭で増田アーニャが歌ってるとこ見たらクオリティが高すぎてもうこれは観ないと後悔するわ……と思って慌ててチケット取りました。まんまと策略にハマった……
Wキャストは森崎/唯月/増田/瀧澤の回。全く意識してなかったんですが、増田アーニャの東京楽でした。

 

いやあのごめんなさいこんな面白いとは思わなかった!
東宝が本気出して2.5次元舞台を作るとこうなるんだなってのをまざまざと見せられた気がしたし、出演者さんたちがとてもキャラとしてリアル。原作の笑いどころもうまく落とし込まれてて、帝国劇場でこんな笑う日が来ようとは。
原作があって出演者の姿まで作りこまれててさあ原作を再現するよ! と見た目でいかにも主張しているような2.5次元舞台は、あまりにキャラがかけ離れていたりストーリーに改変が加えられてたりすると冷めてしまうんですが、本当にうまく原作をミュージカルに落とし込んで、しかもたぶん初見の人にもわかりやすくなっていたと思う。
そのせいで第一の目的であるイーデン校に入学できた! けど入学式までたどり着かずに終わってしまったけど、あの後やると子役をめちゃくちゃ連れてこなくてはいけなくてあまり現実的ではないのでそこら辺もいい落としどころだったなあと思います。平和な帝国劇場素晴らしい。登場人物スパイと殺し屋と秘密警察とその関係者たちだけど。

 

アーニャをオーディションで決める、と聞いた際にはあまり期待していなかったのですが、さすが勝ち抜いてきた子たちだけあってむちゃくちゃアーニャだし度胸あるしすごい……と思いました。あとアクションの吹き替えがある舞台って初めて見ましたが、そのおかげでヨルさんのアクションめちゃくちゃ格好良かったです。もちろん簡単なアクションは唯月さんご本人がやってらしてこれも格好良かった。自分は絶対二枚目の顔を崩さないのに周りに振り回されて客席に笑いを振りまく森崎ロイドも最高。あとスーパー朝夏まなとタイムマジでスーパー朝夏まなとタイムだったしそれでいてストーリーの進行を妨げてないのもすごい。
考えてみると、今まで東宝主催で私が観た中で完全に虚無ったミュージカルってないのですよね。合わなかった、というのはあるにせよ。もしかしたら私が知らないだけで存在するのかもしれないけど、個人的に東宝への演目の選び方・作り方への信頼感が上がったミュージカルでした。

 

Wキャストはフォージャー家、特に大人2人をどうしてもこの組み合わせで観たくて、あとはFNSで観たのが増田アーニャだったのでこの回を選びましたが、カーテンコールの挨拶動画とか見て他のアーニャも見たくなった……謙信アーニャばり観てえし他のアーニャも絶対いいやつじゃんこれ……15分くらい本気で博多座に行く予定を考えてしまい「ムーランルージュがあるでしょ!」って何とか自分を抑えました。千穐楽の配信は観たいです。円盤は迷っています。

 

帝国劇場はいつも荘厳なミュージカルか某事務所の催し物的舞台やってるイメージですけど、休館に向けて、今まで観なかった層にも帝国劇場の存在を知らしめようとしているのかな、とは思いました。休館の間にミュージカルファンも入れ替わってるかもしれませんものね。
なんかこんな楽しい演目を、帝国劇場で観る贅沢を享受できて良かったなあと思います。ただ、1階A席は私には少し見辛かったです……後ろのお子さんちゃんと見えてたかな大丈夫かな……かさ上げのクッションはもらってたけど。





6:太平洋序曲

最初にもう一度言っておきますが、感想がめちゃくちゃマイナスなのでそれに耐えられる人だけこの項を読んでください。耐えられない人は<ここを押せば次のジェーン・エアの感想に飛べます>。



Wキャストは山本/海宝/ウエンツ。カーテンコールで前楽でWの方々の東京楽だと知りました(またか)

 

舞台美術はとても綺麗でした。屏風みたいな仕切りとか、丸くくりぬかれた後ろの壁とか。でも私基本舞台美術は良かったからまあよし! はならない人なので。

 

昔ミュージカルが苦手な理由の一つに、「歌ってる間話が進まないから」ってのがあったんですね。でもそれって話が進んでないように思えても登場人物の心情を歌ってたり、情景を表現したりしてるんだ、と思えるようになってからはミュージカルが楽しめるようになったんですけど、まさかこの期に及んで「歌ってる間全く話が進まない歌」に出会うとは思わなかった。苦痛すぎて、席が通路脇だったらたぶんあの曲の途中で帰ってたと思う。それくらい苦痛だった。木の上から見たからなんやねん。
神奈川のシーンも本当に苦痛でした。必要なシーンなのはわかるけど、それだけの尺取る???一幕物やで?????

 

あと私が気持ち悪くなってしまったのが、「将軍と老中を女性が演じていたこと」。ただ演じているだけならジェンダーの垣根を超えて役が出来るのっていいね、と素直に思えてたんですが、あれ結局外国に言いくるめられてしまう立場の弱い存在を女性が演じてたってことですよね。別にフェミニストとかじゃないんですけど、鎌倉殿の13人の政子のセリフを頭に思い浮かべてしまった。あれはわざと言っているなら、だったけど。わざとやっているなら。

 

極めつけは、いや江戸時代に将軍が斬り殺されたらいくら何でも大事件になるだろ、ってところ。我慢のメーターが振り切れました。(あとであれは桜田門外の変を外国人にわかりやすいように改変したんだ、という説を見かけましたが、そうだよね外国産のミュージカルだもんね、でもここ日本なんだ。)
たぶん再演されても、推しが出ない限り観ないと思います。つまらないを通り越して苦痛でした。

 

ただ、出演者の皆さんは良かったですね。本当に。だから余計に惜しい。山本さんの、アクシデントを笑いに変えてしまう狂言回しのスキル良かったし、ウエンツくんと海宝さんの歌のやり取りのデュエットも……まあ、あれもあれ以上長かったらキレてましたけど← 内容はちゃんとあったし、後半考えが逆転していくところに繋がっていくのが切なくて良かったです。(ただ実在の人物の人生をあそこまで改変するなよとは思った。途中ドラマチックにしようといろいろ捏造されてるエリザベートの人生すら彼女のポリシーや死んだ日や死に方はちゃんと歴史と辻褄合ってるんやで!?)あと皆さん歌うまでとても良かった。ただソンドハイムさんの曲の良さがストーリーのいらいらにかき消されてよくわかんなかったので今度はもっと別の演目で聞きたいです。最後のどんでん返しのような舞台のセットの変化の様、あれも意味があるんだろうなあと思うし演目によってはうわあ、と感動してたと思うんですがそれまでに疲れすぎてもう何も感じなかった。

 

まあでも気になっていたは気になっていたので、観たことは後悔してないです。再演があってもよほどのことが無ければ観ないだけで。

 

ここの感想飛ばした人のために少し多めに行空けますね。









7:ジェーン・エア(配信)

現地ではないんですけれど「観た作品」として含めたかったので。キャスト聞いた瞬間に「あっダメです取れないです」で諦めた作品なので、配信あって嬉しかった……
屋比久ジェーン回を観ました。

 

導入のナレーションが私の苦手な部類のストレート舞台みたいな感じだったのであれっ大丈夫かな……? と思ったんですが杞憂で、そういうシーンは本当に物語のアクセントのような最小限だったのでむしろ良かったです。セットも凝ってて(配信だと上演前に舞台セットの隅々を色々見せてくれて楽しかった)、あと舞台上でもお客さんが観てるって形が面白かった。


内容的にはあしながおじさんはいなかったけど救いだけを遺して逝ってしまった友人を思い続けて自分で道を切り開く少女のダディロングレッグズだな! と思うとすんなり理解できた。井上さんだし(……)ジルーシャもですけど、ジェーンもあの時代に自分の信じる道を、ジルーシャの武器は才能でしたけど、ジェーンは慈愛をもって切り拓いていこうという姿勢がとても力強くて良かったです。特にジルーシャの武器は最初から備わっているものだったけれど、ジェーンはまず自分が変われたからこそのその後の道なんだなあ、というのがとても良いなあと。最初は超ブラックな環境で大丈夫か……? って思ったけど家庭教師となった先の家は打って変わってホワイトでよかったし。主人のご夫婦以外は。
ロチェスターが何であんなでっかい秘密を抱えたままジェーンと結婚しようとしてたのかは謎ですけど(今でも犯罪だよお前)、ジャーヴィー坊ちゃまと違って最初っからジェーンのことめちゃくちゃ欲しがってるの隠さないのも良かったですね。いやダディロングレッグズと比較するな。(ジャーヴィー坊ちゃまのツンデレ具合も好きです)

 

屋比久さん、n2nで観たぶりだったので、今回は基本的に静かな曲が多い印象で、それでもしっかり歌い上げられててやっぱ好きだわ……となりました。また劇場で拝見したいなあ。萌音ヘレンも登場シーンが少ないながらも、その後の話の展開にはなくてはならないめちゃくちゃ重要な役を慈愛たっぷりで演じられていてとてもよかったです。ダディの亡霊が私にまだ憑りついてなければ萌音ジェーンも観たかった(※坂本真綾さんのファンなのでちょっとまだ井上×萌音ペアを実際見ることに抵抗があるという……萌音ちゃん自身はとっても好きなんだけど……)

 

再演があったら現地まで観に行くか? と聞かれるとどうだろう……となるんですけど、それでも見た後で心にあったかいものがともるような、良い舞台でした。




まとめです。

 

この他にもいろいろ上演していてもう全部拾いきれてないので結局何作品3月に東京で上演があったのかわかんない笑 しかも上記に加えて、推しがやたらイベントぶちこんできたのでほぼ毎日出かけてるし有給休暇はガンガン減っていくし、みたいなすさまじい1ヶ月でした。
まあでも楽しかったな! おそらくここまでいろいろと走り回ることも今後そうないかと思うので、そんな時期があってもいいよね、という感じだったので、ここに記録しておきます。たくさんの良い作品が観られたので、今年もこの調子でどんどんいい作品が観られるとよいですね。私はムーラン・ルージュ! にいろいろ吸われてあんま数見られなさそうだけど←

 

ここまで読んでくださった方お疲れ様でした。お互い今後も楽しいミュージカル観劇が出来るといいですね。とりあえず今度3月無事に乗り切りましたってお礼をしに神社に行ってこようと思います笑